第34回岩手県がん対策推進協議会は2024年3月5日に開催され、岩手県がん対策推進計画の最終案について医療政策室より説明がありました。

当会からは伊藤ヨシ子副代表が出席して、会からの意見を述べました。

伊藤ヨシ子副代表

「・9医療圏から5医療圏に再編されるということを県民にわかりやすく丁寧に説明して欲しいと思います。特に、再編によって実際に大きな変化をこうむる県北部・沿岸部の住民の方々には、丁寧に説明して理解を求めると共に、その方たちの思いも十分に聞いてもらいたいです。特に、一人暮らしで年金暮らしの方等はこれまでもがんなどにり患した場合は、少しでも良い治療をと思えばやむを得ず遠方の盛岡の岩手医大などを利用していた訳だが、今回の再編により、県北部沿岸部から盛岡周辺の高度医療病院を利用することがなし崩しに「当たり前のこと」になってしまいます。

・岩手県は本州で最も広い県土をカバーするため「県下にあまねく良質な医療の均てんを」の理念のもとに20の県立病院を設置して来ました。県内どこに住んでいようとも等しく良質な医療を受けることができるように、高齢化、少子化、医師不足などの厳しい現状を踏まえながらも今一度行政、医療、県民が共に考え、これまでの医療体制をできるだけ維持するよう検討することが必要ではないでしょうか。

・県北部、沿岸部のがん患者さんが高度専門医療を受けるためには、盛岡医療圏域のがん診療連携拠点病院等に通院しなければならないことから、交通費補助等の負担軽減策の検討が欠かせないと思います。地域間格差を埋めるため、居住する市町村以外で治療する場合のサービスの利用促進(移動の介助、送迎他)や、治療のための宿泊への助成、バス・タクシー代補助の制度創設などの検討が必要と思われます。」

当会からの質問と医療政策室の回答

「Q(岩手ホスピスの会):次期岩手県がん対策推進計画決定後、来月から始まる同計画の施行につきまして、具体的なスケジュールを教えていただきたいと思います。4月以降の具体的なスケジュールが決まっていないなら、9医療圏から5医療圏に再編されるということを県民にわかりやすく丁寧に説明して欲しいと思います。」

「A(医療政策室):4月からすぐ変わるというものではなく、将来的には拠点病院の配置配属・ 設備導入などのタイミングもあるので具体的スケジュールは現在無い。県民への周知について は機会をとらえながらしたい。交通費などの補助については、各県の取り組み状況などをふまえ てということにしたいと思う。」

岩手ホスピスの会2023年度総会は、2024年2月10日(日)盛岡市総合福祉センターで開催され、事業報告、会計報告、会計監査報告がありました。

★新年度の活動基本方針として、

1.がん患者さんとそのご家族を様々な角度からサポートする。  

・タオル帽子活動やがん情報の発信、患者さんを支援する栄養講座やホスピスセミナー等の開催、県内各市町村に医療用ウィッグ購入費用助成を要望、がん相談窓口の充実

2.全国関連団体への積極的活動協力を行い、相互の情報交換を深め、岩手と日本のがん医療・緩和ケアの推進をはかる。 

3.設置された岩手県内各ホスピスの見守りとボランティア協力

4.東日本大震災により被災した沿岸部への支援。

★岩手ホスピスの会通信年3回発行、ホームページ運営、定例役員会は毎月1回の予定で行う。

-等が提案・承認され、新年度役員が選出されました。

超高齢社会の到来に直面し、私たちはこれまで以上に患者家族が結束し、助け合うことの重要性を感じています。共に寄り添い助け合い、質の高い緩和ケアの実現を願って、活動を継続して行きたいと思います。

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12月15日盛岡第二高等学校でタオル帽子作成講習会が開催され、同校家庭クラブの生徒計40人が、抗がん剤で脱毛した患者さんを支援するタオル帽子作りを体験し、がん患者支援への理解を深めました。

同校での作成講習会は今回で7回目となり、当会のタオル帽子作りボランティア7名が指導に当たりました。

同校生が作成したタオル帽子は、ボランティアの方たちの手直しの後、抗がん剤の副作用で脱毛に悩む患者さんに届けられます。

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    ↑岩手県議会議長室にて

2023年12月12日 「岩手県のがん対策の推進に関する請願」は、岩手県議会本会議において全会一致で採択されました。 多くの方々のご助力により請願は採択されました。しかしまだ何も問題は解決しておりません。次の一歩をどう踏み出すか。一人でも多くの方に問題を知っていただき、がん患者さんが少しでもその人らしく過ごせるように、これからも活動を継続したいと思います。皆様のご協力をお願い致します。

2023年12月4日 岩手県議会議長 工藤 大輔 様

岩手ホスピスの会 代表 川守田 裕司

盛岡かたくりの会  会長 下川原 良子

岩手県のがん対策の推進に関する請願

(請願趣旨)

少子高齢化が加速し、労働力不足や労働者の高齢化など様々な課題が山積する中、限られた医療資源の下、岩手県の地域医療のために尽力されている関係各位に心より敬意を表する。

本県において、令和元年の死亡者の主な死因のうち、がんによる死亡者数は4,471人、総死亡者数17,826人に占める割合は25.1%となっており、4人に1人ががんで亡くなっている。

また、昭和59年以降、がんは死亡原因の第1位となっている。

一方、国全体で見ると、生涯で約2人に1人はがんにかかると推計されており、依然として、がんは県民の生命と健康にとって重要な課題となっている。

県では、平成20年3月に岩手県がん対策推進計画、平成26年に岩手県がん対策推進条例を策定した。

県は、がん患者を含めた県民が、がんを知り、がんの克服を目指すことを実現するため、県民の心と体の健康につながる生活習慣病予防、がんとの共生社会に向けた取組など、がん対策を総合的かつ計画的に推進する中、現在、次期岩手県がん対策推進計画と次期岩手県保健医療計画の策定に向け、がん診療連携医療圏の設定が議論されている。

平成28年の国のとりまとめによると、本県のがん診療連携拠点病院数(人口10万対)は、1.3施設となっており、全国の3.1施設を下回っている。

治る病気ならどこへでも行くが、治らない病気なのであれば、せめて生まれ育った地域や家族の下で最期を迎えたいとの声を多く聞く。

医師や看護師等の医療従事者の不足や地域偏在等の事情があるが、急性期から在宅まで切れ目のない地域医療の充実や、1人でも多くのがん患者が痛みから解放されて少しでもその人らしく過ごせるよう更なる緩和ケアの充実など、地域のニーズや患者の特性、患者・家族の声にもしっかり耳を傾け、県北部、県沿岸部、県中央部、県南部など広い岩手県に生きる各地域の方々の思いに寄り添った議論を進めて頂きたい。

平成28年には、がん対策推進基本法が改正され、新たに法の理念にがん患者が尊厳を保持しつつ安心して暮らすことのできる社会の構築を目指し、がん患者が、その置かれている状況に応じ、適切ながん医療のみならず、福祉的支援、教育的支援その他必要な支援を受けることができるようにするとともに、がん患者に対する国民の理解が深められ、がん患者が円滑な社会生活を営むことができる社会環境の整備が図られることが追加された。

ついては、本県のがん対策の推進に関し、下記の事項について請願する。

(請願事項)

1 がん診療連携医療圏の設定に関わらず、がん患者とその家族が可能な限り、質の高い生活を送ることができ、また、住み慣れた家庭や地域での療養や生活を選択できるよう、引き続き必要な支援を受けることができる環境整備の充実を図ること。

2 診断から治療、在宅での緩和ケア医療から看取りなど様々な場面で切れ目のない医療が提供され、がん患者がいつでも、どこに居ても、尊厳を持って安心して生活し、自分らしく生きることのできる地域共生社会の実現を図ること。

3 県北部、沿岸部のがん患者が高度専門医療を受けるためには、盛岡市方面のがん診療連携拠点病院に通院しなければならないことから、交通費補助等の負担軽減策を検討すること。

11 月22 日、東京海上日動あんしん生命様から当会に、同社社員の方たち等が手作りしたがん患者さんのためのタオル帽子1,000個とタオル535枚が寄贈され、同社の庵貴敏人事総務部長のあいさつの後、当会に目録が手渡されました。当会のタオル帽子活動に多大なるご支援を いただいているあんしん生命様に深く御礼を申し上げます。

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ー写真 過去のがん対策推進協議会ー

第32回岩手県がん対策推進協議会が2023年9月19日に非公開で開催されました。

会議の中で当会から以下の通り要望を述べました。

岩手ホスピスの会:

先月9日のTVニュースで、「地域医療を守る岩手県連絡会」のメンバーが、現在20カ所ある県立病院について、縮小や統合を行わないことなどを求める1万8000人分の署名を県に提出した様子が映し出されました。

同連絡会は、現在県が新たな「保健医療計画」の策定を進めているのにあわせて署名を提出したもので、20カ所ある県立病院について、縮小や統合を行わず機能の充実を図ること、一般的な医療を完結できる地域として設定されている9つの「保健医療圏」を今後も維持することなどを求めているとのことです。

また同団体では2021年10月にお産が休止されるなど機能が縮小している県立釜石病院をめぐり、市民から不安や負担が増したとの声が出ていると訴えました。

これに対し県では「人口減少が進んではいるが、病院の再編ありきではなく丁寧に議論を進めるよう取り組む」と応えていました。

このことについて、私たちがん患者会としても岩手に生きるがん患者さんとご家族の思いに立って、共に考えなければならないと感じています。

岩手は広い県土を持ち質の高い医療は中央部に集まり、沿岸部の医療は統廃合が進んでいるように地域住民は感じています。

医師・看護師不足を抱える中ではありますが、急性期から在宅まで切れ目のない医療を目指す県の姿勢に加え、地域のニーズや特性を訴える患者家族の声にもできるだけ耳をかたむけてほしいとおもいます。

治る病気ならどこへでも行くが、治らない命を迎えるときにはせめて生まれ育った地域や家族のもとで最期を迎えたいと声を沢山聞きます。

県立病院の次期経営計画がどのようになるのか、患者会としては関心が高まっています。

県中央部、北部、南部、沿岸部など広い岩手県に生きる各地域の方々の思いに寄り添った議論を進めて欲しいと思います。

また、これらの地域医療の充実を願うことはもちろんですが、一人でも多くのがん患者さんが痛みから解放されて少しでもその人らしく過ごせるように、岩手県における更なる緩和ケアの充実を切に願います。

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当会で作成した映像「緩和ケアへの願い-がん患者とそのご家族の経験から-」上映会は9月23日に開催され、約90名の参加者が来場して、映像を見ながら、治療への不安、副作用のつらさ、緩和ケア病棟での生活、家族との向き合い方などを考えました。上映後は参加者約40名が集まり懇親会を開催しましたが、多くの方々が自身のがん闘病体験、家族を看護・介護し看取った体験、不安に思っていることなどを語り、大変深い語り合いで有意義なものになりました。患者さん同士語り合うことは本当に大切だと改めて感じました。機会があれば今後もぜひ開催して行きたいと思います。

7月29日盛岡市総合福祉センターで「がん患者さんのための公開栄養講座」を県立胆沢病院栄養サポートチーム専従管理栄養士・がん病態栄養専門管理栄養士の蛇口真理子さんを講師に開催しました。 約20名の参加者と「がん治療中に体力と筋力を落とさない食事の工夫」について一緒に考えました。 参加した方々からはそれぞれ切実な相談がありました。 今回の栄養講座のポイントは以下の通りです。 ● がんの治療中は、吐気や味覚障害などで食欲が落ちやすく低栄養状態になりやすい。 ● 食べやすいものを常備しておく、分割して食べること・少量ずつ栄養補給していくことで低栄養の予防になる。● 体調がいい時は、外出や軽い運動でリフレッシュをしてみる。 ● 自分、家族だけで抱え込まずに病院スタッフに相談してみることが大切。 DSC04020.jpg

P1040456.JPGがん患者の声を映像で伝える

「緩和ケアへの願い」上映会

ーがん患者とそのご家族の経験からー

2022年制作/34分   

企画・制作:岩手ホスピスの会

構成・撮影・編集:大森智加江(記録屋)

ナレーション:尾形さゆり

この映像は、公益財団法人正力厚生会の助成を受けて制作されたものです。

上映会開催日:2023年9月23日(土) 13:30から

参加無料

会場:盛岡市中央公民館講堂 (盛岡市愛宕町14-1)

(上映後参加者懇親会、何でも相談お茶っこ会開催)

問い合わせ:岩手ホスピスの会(電話090ー2604ー7918)